上部頚椎テクニックほど大好きな人、大嫌いな人と両極端に好みが分かれるテクニックは無いと思う。
おそらくその原因と思われるものは、治療に対しての哲学(考え方)に起因するのではないかと考える。
カイロプラクティックは元々の出発点が治療である。
創始者DDパーマーは長く磁気治療師として活動していたのである。
治療師として生きていくためには患者のニーズに応えなければならない。
とすれば、ニーズの追求=症状の緩和もしくは消失。
DDパーマーは症状を追求していたのである。
彼の言質には症状の原因についての記述がある。
サブラクセイションの原因は3つ。
自己暗示、外傷、毒という。
言い換えれば
精神的ストレス、肉体的ストレス、科学的ストレス
である。
彼は症状の消失を追求していたがためにサブラクセイションの原因にまで遡及していたのである。
私が思うに彼は長い治療師生活の中で患者が訴える症状に、翻弄され、学び、解決策を模索する中で原因の原因を考えるようになったのではないか。
少なくともカイロプラクティックの創始者はそう考えていたと思われる。
2代目になり、カイロプラクティックは飛躍する。BJパーマーの登場である。
HIO学説の発表者にして、上部頚椎テクニックの生みの親。
カイロプラクティックの世界では、発展者として、またカイロプラクティックをすくった人物として今でも語られる。
強権的なところもあり、カイロプラクティック界のスターリンとも揶揄されることもある。
BJパーマーは、カイロプラクティックを症状追求型の治療術から、症状を追わない治療術に飛躍させた。
発展では無く、飛躍。
創始者が意識した原因の原因の追求は無くなってしまった。
BJパーマーは、リサーチクリニックを作り、難病、難症の患者を、上部頚椎テクニックのみで治療した。そして素晴らしい結果を出した。
すべての患者は当時の西洋医学の検査を受けて、病理学検査等は医師等のメディカルスタッフが担当していた。
14年間、BJパーマーは研究した。そして上部頚椎(HIO理論)の正しさを彼なりに実感した。そしてそれを世間に発表したのである。
BJパーマーの偉大な功績は、カイロプラクティックに携わる人々には周知の事実であるが、、、
彼が見落としたものは、サブラクセイションの原因である。
サブラクセイションが除去されても症状が緩和されない時、自然治癒力が、まだその患部に到達していないからと、説明する。
それでも待てる患者と待てるカイロプラクターは良いのだが、現実問題として待てない人が多い。
だから上部頚椎テクニックは好き嫌いが分かれるのである。
患者は治してもらいたい。カイロプラクターは治したい。
となると、治療テクニックは、症状を緩和するものに傾いていく。現世利益をみんな求めているのである。
今から6〜7年前に高名なカイロプラクター達に上部頚椎テクニックについて尋ねたことがある。
中川貴雄DCは
腰痛の患者の場合、自分がもし患者だったら腰が痛いのだから腰を触ってもらいたいし、腰の治療をしてもらいたいと言っていた。
中川氏の治療の方法は独特である。既往歴をひたすら聞く、患者の抱える問題が長いほどその問診の重要性が増すのである。
そしてその問診から得られた情報を基に治療を組み立てて結果を出すのである。
私が見た感じではDDパーマーのいうサブラクセイションの原因を見つけるような治療法である。
ちなみに出身大学は、ナショナル系(ミキサー)である。
塩川満章DCは
上部頚椎に造詣が深い。ターグルリコイルテクニック、ニーチェストテクニック、AOT、トムソンテクニック等
私も、ターグルリコイルテクニック、ニーチェストテクニック、トムソンテクニック等は直接教わりました。
C-3000サーモグラフィーを使い、頚椎の温度測定をしてBJパーマーの目指していた治療に近い方法であると確信する。
しかし、塩川氏の臨床もまた特異的なものである。
臨床家としての塩川氏はガンステッドを主軸にトムソン、磁気テクニックを補助的に使い結果を出しているのである。
その臨床には上部頚椎テクニックに対する教条的なこだわりは皆無である。もし塩川氏が、本当の意味での上部頚椎テクニックを実践しているのであれば、ガンステッドを使う理由がなくなる。
ガンステッドテクニックの特徴は症状追求型の方法論である。
副交感、交感神経どちらの神経系が症状を作り出しているか分析し、特異的にそのサブラクセイションを矯正する。
私は塩川氏のセミナーを何度も受けてパワフルな講義に魅了された。しかし氏の臨床は、講義とは乖離している。
つまり矛盾である。治療家とは孤独なもので臨床は結果が求められるから、それに応えているとカイロプラクティックの根本原理(BJ哲学)が失われる。
だから塩川氏は、心のバランスを取るため精力的にセミナーを開いているのではないだろうか。
ちなみに出身大学はパーマー系(ストレート)である。
上部頚椎テクニックを臨床に取り入れると、患者の症状と自分の信念との葛藤、そして結果を求められるのである。
このプレッシャーに負けず上部頚椎テクニックの臨床をしている治療家を尊敬する。
「答えが決まっているから、後はリスティングを出すだけ」
しかしその背景には、色々な思いが詰まっているテクニックである。
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